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「折れない新人の育て方」

折れない新人の育て方 (自分で動ける人材をつくる)

折れない新人の育て方 (自分で動ける人材をつくる)

ここ最近、近頃の新入社員は「我慢が出来ない」「主体性がない」「やる気がない」「すぐ辞める」ということが言われていますが、なぜ最近の新人はそうなのか、そういう新入社員をどうやって育てていけば良いのだろうか、ということが書かれている本です。

新入社員の離職率は、本当は1980年代からほぼ変わらないことや、常識の違いによる偏見、誤解がある、と新人を擁護する立場での意見が書いてあるのと並列に、用いられている例えには「読者の皆さんは信じられないだろうが、最近の新人は悪気なくこんなことを言うのだ」というような書き方もされており、新入社員が何をどう感じて行動しているのか、ということが、わたし自身よりも上の世代から見た視点で書かれています。

この本が執筆されたのは2009年、本の中で書かれている「新人」世代とは、ちょうどわたし自身があてはまる世代なので、もっと上の世代から見ると、わたし達世代はこういう風に思われていて、こんな風に分析されているのか、と(おそらく著者の意図していた読まれ方とは違った意味で)とても興味深く、面白く読めました。

本の中では、社会の変化と共に、新人をとりまく環境が(著者の世代と比べて)随分と変わってきていることが書かれており、IT化が進んだことで、以前なら自然と身につけられたコミュニケーション能力も放っておくだけでは育たなくなっていること、業務の複雑化により全体が見えないことが増え、自信に繋がる小さな達成感や成功体験が得にくくなっていること等があげられています。

さらに、新人が育ってきた社会背景などを踏まえ、「新入社員の価値観を理解するための5つのキーワード」として、「成長(成長願望が強い、そのため無駄な作業と感じたらやる気をなくす)、貢献(役に立ちたいという思いが強い)、絆(同期同士の絆は以前よりも深い)、自分らしさ(誰でも出来る仕事だと思うとやる気をなくす)、リセット(転職は能力がある人だから出来るものと捉え、転職に抵抗がない)」ということがあげられています。

わたしから見ると、どれも「そうそう、そうなんだよね」と納得できるものばかりで、わたし達世代のことをよく捉えているのだなぁと感じました(だけどこの5つのキーワード、もっと上の世代から見ると「信じられない!」と思われることなのかもしれません。その辺りのことについてはあまり触れられておらず、新入社員の価値観はこうだから、こういう風に接していきましょう、という話しに流れていたため、どこにどうギャップがあって、上の世代の人達の「当たり前」が何なのか、というところも知りたかったです)。

また、本の中では、新人が躓きやすい10のポイントがあげられていて、それぞれごとに、どうフォローをしていくのが良い、ということが書かれています。そしてそれをまとめると、上司や先輩自身が新人だった頃のことを自分でしっかりと振り返り、理屈よりも経験で語り、こういう風にしなければならないと諭すよりも、新人自身が「何事もプラスに捉えられるようになる」ような態度を取ろう、ということが書かれていました(プラスに捉えられる態度とは、ミスをした時に落ち込んでいたら「ミスは起こるもの、次に活かそう!」と前向きに声をかけること、逆に、自分のせいではない、と開き直ったり気にもしていなければ「同じような状況になったら、次はどうするんだ?」と自分事として捉えられるように声をかける、等、新入社員の気持ちを「前向き」にさせていく態度)。

著者との世代が自分とは離れているため、読んでいる途中、少し他人事の気分にはなってしまいましたが、自分のことを分析されているようで面白く、また、上の世代や、そしてこれから増えていく下の世代、どんな世代間であれ、そこには絶対に、何かしら大きな価値観のギャップがあるものなのだと感じました。

今までの生活を少し振り返ってみれば、なんの疑いもなく「当たり前」としている、その背景の違いからくる誤解というのは、職場だけではなく、いたるところにあるのだと感じます。それを常に念頭において、柔軟に思考を切り替えられるようになるのは難しいとは思うけれど、まずは、何か「あれ?」と思うことがあった時には、自分と周りとでは前提条件や背景が違い、そこにはギャップがあるのだということを、思い出せるようになれれば良いなぁと思います。

今回は、自分が所属している世代についての分析と対応、という形でこの本を読みましたが、違う世代に焦点をあてた本も読んでみたいなぁと思います。