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「私が会社を変えるんですか?」

私が会社を変えるんですか? AIの発想で企業活力を引き出したリアルストーリー

私が会社を変えるんですか? AIの発想で企業活力を引き出したリアルストーリー

「会社を組織開発していくサクセスストーリー+その解説」の二本立て。さくさく読めて読みやすく、何よりストーリー部分では「そうそう!」と頷ける部分がたくさんあって、共感しながら読むことが出来ました。

AI(アプリシアティブ・インクワイアリー)という考え方を、この本を読んで初めて知ったのだけど、ネガティブンシンキング(問題解決型)をするよりも、ポジティブシンキング(理想実現型)をしよう、という考え方は、なるほど、と思いました。AIは「Appreciative(真価を求めるような) Inquiry(探求、発見、問いかけ)」の略で、まさしくという名前◎

組織、社員の問題を見つけて解決していこう、という「問題解決型」の手法ではなく、組織、社員の良いところを見つけ、そこをこそ伸ばしていこうという「理想実現型」の手法は、責任の押し付け合いにならないのが良いところ。問題解決型だと、問題を見つけた時点で、その問題の責任はどこかにあるのかと考え始め、自分や部門を守るための無意味な責任のなすりつけが起こりがちだけど、理想実現型では、少なくとも「今ある問題」に注目する訳ではないから、問題の責任の押し付け合いは起きない、と書いてありました。以前、コンサル会社の方が「今までいろんなことを経験してきたけど、不満は原動力にはならない、という結論に至った」とおっしゃっていたことにも通じます。

それから、組織は生き物、という考え方。サナギがいきなり蝶にはならないように、子どもがいきなり大人にはならないように、いきなり思い描くような会社にするのはとても無理。ひとつひとつ、段階を踏んで、成長していく必要があるし、もちろん、AIを推進するわたし達自身も、変わっていかなければいけない。組織が成長していくということは、社員が成長していくということ。わたし達自身もまだサナギで、組織の成長にあわせて、成長していかなければいけない。この言葉には、すごく、はっとさせられました。もっとよくなること、変わることを強要するんじゃなくて、AIを推進するわたし達こそ、間違ったことをすればそれを認め、先陣切って変わっていくべきで、そのことを忘れないようにしないと、と思います。なにより、わたし達自身が当事者で、他の誰かの会社を成長させようとしている訳ではないのだから。つい、第三者的視線で見てしまうこともあるけれど、決して決して、他人事になってはいけないのだと思いました。

それから、AIを動かす4Dサイクルのこと。「ディスカバリー(Discovery) = 潜在力発見」「ドリーム(Dream) = 理想像構築」「デザイン(Design) = 変革設計」「デスティニー(Destiny) = 変革実現」の4つ。ここで、AIを推進するにあたって、特に正念場なのは、Designの部分。楽しく夢のある理想をいかに現実にするか、そのギャップでくじけそうになりがちなところには、プロのファシリテーターの手を借りるのが良いそうです。最初の1サイクルをプロのファシリテーターに回してもらった後は、たどたどしくても、社内のAI推進チームの手で回していく。それは、自分達の会社を自分達の手で回していけるようになるべきだから。上手にコンサル会社を使おう、という言葉も、印象的でした。頼りっぱなしでは何にも解決しない。解決するのは社員自身。

社員に向けてビジョンを発信するときには、キレイにまとまった、温度のないキャッチコピーやスローガンよりも、土臭さ、人間臭さを感じられる言葉を選ぶのも、とても大切。人は結局、感情で動く生き物だし、やりたいと思ったことしか、やらない。そのキャッチフレーズやスローガンが「自分のもの」になったとき、初めて実感して、自分のこととして考え始め、動き始めるんだなぁと、感じました。